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アポトーシスと細胞社会-血液細胞社会を中心に-

■巻ページ:高知市医師会医学雑誌 第5巻 第1号 10~25頁 2000年
■表題:アポトーシスと細胞社会-血液細胞社会を中心に-
■title:Apoptosis in Society of Blood Cells
■著者:高橋 功 Isao Takahashi
■共著者:

■要旨(はじめに)
アポトーシス
昨秋、久しぶりに金沢を訪れた。金沢城址、兼六園、護国神社周辺、樹齢を重ねた樹木に歴史の重みが漂う。一方また、大小様々の木々に「雪つり」を掛ける人達からは、冬支度への細やかさと気配りが伝わってくる。5年前に訪れた時も晩秋だったが、県立美術館、本多の森公園、美術の小径の紅葉は金沢の魅力を一層強く感じさせてくれる。旅のひとときの感傷だろうか。木々の葉が紅葉し、落葉する現象をアポトーシスという言葉で表現したのはヒポクラテスだと言われているが、晩秋に見られる落葉現象は自然の摂理でもあり、その落葉はまた春の新緑へと続く生命サイクルの中で位置づけられるものかもしれない。 
 さて、アポトーシス(apoptosis:自然死、自死)、この比較的哲学的なニュアンスを持つ言葉が医学の世界に登場したのは1972年で、 Kerr、Currie、Wyllieら1)が虚血肝の組織標本を観察中、形態学的にネクローシス(necrosis:壊死)と異なった細胞死のあることを見出し、「Apoptosis:A basic biological phenomenon with wide-ranging implications in tissue kinetics」として報告したのに始まる。これまで細胞死といえばネクローシスを意味したが、彼らはすでにその時、この細胞死はネクローシスとは本質的に異なったもので、細胞分裂と表裏一体となって細胞集団を制御しているのではないか。また、形態学的な特徴から、細胞損傷などによる単なる崩壊過程でなく、能動的でかつ本質的にプログラムされた現象でないかと考えた。その後、アポトーシスは遺伝子によって制御された細胞死であり、個体発生における組織、臓器の形成、ホメオスターシスに強く関与することが明らかにされると同時に、各種疾患における病因・病態論的関与さらにその治療学的意義を含め、ひろく注目されている2,3,4)。これまで本院でも血液疾患を中心にアポトーシスの病因・病態論的関与について検討してきたが、今回はこれら成績もまじえ「アポトーシスと細胞社会」、特に血液細胞社会との関わりについて概説したい。
■Key:words Apoptosis、Hematopoiesis、Hemtological diseases
■備考:たかはし いさお 780-0821 高知市桜井町2-7-33 高知県立中央病院内科